ルワンダの首都キガリにて2018年8月から3ヶ月で103件の貧困女性調査を行いました。
調査を始めたきっかけや目的などは以前のブログで紹介していますのでご参考ください。

この調査を通じて私は10人弱のセックスワーカーの女性たちに出会いました。
ルワンダの首都キガリには売春街といわれる場所がいくつかありますが、調査で訪れた村(スラム街と言われる村)もその一つでした。
その一つの村では61人の貧困女性の調査をしましたがその中でセックスワーカーと打ち明けてくれたのは8人です。
今日は彼女たちと話をして見えてきた現状を数字を使ってご紹介します。
ルワンダの貧困女性調査:セックスワーカーの現状について語ります
ここでは一つの村61人の貧困女性とその中の8人のセックスワーカーを比較しています。
年齢層
村全体で調査した61人の年齢はこちら。

20代30代で75%を占めていました。とくに30代が多かったです。
そのうちセックスワーカー8人の年齢はこちら。

半数以上は20代と若い女性が多いことがわかります。
現地人から聞いた話ですが、この村は年齢の若いセックスワーカーがいる村で、年齢を重ね売春婦として生計が立てられなくなると、丘の反対にある村(こちらも貧困層が多く生活する)に移動するそうです。私は丘の反対にある村にも調査に訪れたのですが、そこで調査した女性の平均年齢は41歳でした。
村の一部がセックスワーカーとして働いているだけで、村全体は他の貧困層が多く生活する村と同じです。
HIV罹患率
HIV罹患率はどうでしょうか?
2017年UNAIDSが発表したルワンダ女性15歳から49歳までのHIV感染率は3.4%でした。
対象としている村はどうでしょうか?
調査対象者61人の中でHIV罹患率は15%でした。
さらに、61人の内のセックスワーカー8人中4人がHIVに感染していました。
シングルマザー
村の調査対象者全体のうち76%の人がシングルマザーでした。(死別含む)
そして、セックスワーカー8人中全員がシングルマザーでした。
セックスワーカーの現状
8人中3人は小学校にする通った経験がないため、読み書きもままならない現状です。
また、2人は1994年の大虐殺で両親を失い、ストリートチルドレンや孤児として他の家庭で育てられました。そして1人は大虐殺後に生まれたのですが、小さい頃から両親を知らず親戚に育てられた背景があります。
そんな彼女たち8人全員には子供がいるのですが、うち5人の子供は祖父母や親戚に預けれらています。彼女たちが育った環境が、その子供たちに連鎖している様子がわかりました。
なぜセックスワーカーとして収入を得るようになったのかきいたところ、かつて路上販売をしていたが満足な収入が得られず、他にできることもなくこの職についたのだと話してくれました。
103件調査をしてほとんどの人が洗濯や掃除の日雇いで収入を得ています。
日雇いといっても毎日仕事があるわけではなく、週に2回ほど日雇いの仕事を見つけられたら良い方です。
セックスワーカーとして働いている彼女たち8人中5人もこの洗濯や掃除の仕事もしながら、生活をしています。
セックスワーカーとしても毎日働いているのではなく、「お金がなくなったら道に立って男性に声をかける」という人も何人かいました。
ルワンダでの売春行為は違法で、道で男性に声をかけているのを警察に見つかり、逮捕された経験がある人もいます。みんな命がけで仕事をしています。
隠れながら売春をしているため、売春行為する場所は普通の家で、看板やきらびやかな電飾は全くありません。彼女たちの自宅や友人宅なのです。彼女たちは助け合いながら生活・仕事をしています。彼女たちの子供が家にいて、男性を家に呼ぶときは、友人に子供を託して助け合っていると話していました。
売春行為する場所が自宅なので、近所の大人や子供たちは男性が入っていくのを日常としてみています。
この環境が子供たちに良い影響を与えるとは到底思えません。しかし、これが現状です。
また、HIV感染率が50%のなか、彼女たちにコンドームを毎回使っているか聞くと、返事が濁ります。
コンドームを使おうとすると嫌がる男性がいる、またコンドームを使わない方がもらえるお金が高い、という声を聞きました。
なかには自分がエイズを持っているから相手にうつさないように必ずコンドームを使う、という女性ももちろんいます。
しかし、そうでない女性もいるのも事実。
彼女たちは今生きるためにお金をえることで精一杯の人たちです。学校での教育もほとんど受けられず今に至っています。親の愛情を浴びて大人になった人たちではないのです。
そんな彼女たちに「相手の立場にたって、相手を思いやり、HIV感染を蔓延させないように、コンドームの必要性を理解して使う」ということが難しいのだと感じました。
彼女たちは彼女たちの人生を生きるので精一杯です。世界様々なNGOやWHOがHIVの蔓延を防ごうと必死なのは知る由がありません。
私はインタビュー女性全員に「私が何かお手伝いができるとしたら何が必要だと思う?」と聞いています。
多くの女性はお金が欲しい。お金をもらってビジネスを始めたい、安心して住める家が欲しい、子供たちの学費に使いたい、と話します。
しかし、セックスワーカーの彼女たちの何人かは「このひどい現状から救って欲しい、なにか他にすることが欲しい」と言いました。
好きでこの仕事をやっているわけはない、みんな他に生きる道がないからやっているのです。
これがセックスワーカーとして働くルワンダ女性の現状でした。