2020年までに中所得国を目指すルワンダ。ITC分野に力を入れ急速に発展を遂げていますが、医療の発展はどうでしょうか?
まだまだ医療水準は高くはありませんが、妊産婦死亡率や5歳以下の乳幼児死亡率は改善しており、ITCのみならず保健分野にも積極的に力を注いでいることがわかります。また、IT立国を目指すルワンダ らしく、電子カルテの導入が急速に進んでいます。
2019年4月、ルワンダの地方にある郡病院に視察しました。この記事では視察でみたITCが進むルワンダ の医療の現状と首都キガリ 在住1年6ヶ月を通じて得た患者体験を絡めてお伝えします。
ルワンダ 医療の現状は先進国への過渡期:電子カルテの発展と技術の課題
数字で見るルワンダの医療の現状
2018年にNational Institute of Statistics Rwandaから出された「Statistics Yearbook 2018」を参考にルワンダの保健分野の現状をお伝えします。
人口:1130万人(2015年) →2050年 2210万人
医療施設:1342施設⬆︎(2017年)
医療保険普及率(加入率):73.9%⬆︎
家から医療施設までの平均時間:49.9分⬇︎
貧困率:38.2%⬇︎
HIV感染率:3%(2010/2011年)
推定結核感染者数:161,141人(➡︎)
避妊率(結婚している女性):47.5%(2015年)
合計特殊出生率:4.2人⬇︎(2015年) → 2050年 2.3人を目指す
出生時の平均余命:女性67.5歳 男性63.7歳
妊産婦死亡率:210/10万人⬇︎ (2015年)
※日本の妊産婦死亡率 1985年:226/10万人 1986年:187/10万人 2015年39/10万人
5歳未満の子供の死亡率:50/1000人⬇︎(2015年)
ワクチン接種率:92.6%
妊婦健診受診率(1回でもあり)99%
妊婦健診受診率(4回受診した人)43.9%
栄養失調で入院した5歳以下の子供の数 1561人⬇︎(2017年) 2016年:25,471人
栄養失調で外来にきた5歳以下の子供の数 36,290人⬆︎(2017年)2016年:25,471人
患者になって感じた課題
2018年に首都キガリ の病院を2回受診しました。どちらも在住日本人が受診するような設備が整い専門医がいるような病院です。
始めに行った病院は大きな病院で電子カルテのみならず指紋認証登録するシステムまでありました。
受付の後は、問診室で体温や血圧などの測定をし、受診理由を話します。その時点で私は国籍を聞かれませんでしたが、担当看護師は独断で国籍の欄に「Chinese」と書きました。電子カルテや指紋認証に感激したのもつかの間、先行きが暗くなりました。
その後、診察室の前で待つことになります。診察の順番を整理するシステムはないため、順番待ちは患者同士で暗黙の了解、目線で順番を確認。
肝心の医師は「I am coming」と言いいながら、更衣室でずーと立ち話をしていて診察室に来る気配なし。「いつ診察してくれる?」「I am coming」のやり取りを何度かし、お互いにイライラした頃にようやく診察室に医師がきてくれました。
すんなり診察が終わりあとは処方箋をもらうだけ!とホッとし始めたのですが、ここからが地獄。
処方箋や医療保険を使うための書類は全て手書きです。処方箋はその場で書いてもらえたのですが、医療保険の記録用紙は院内の各保険会社のデスクに行って用紙をもらうところから始まります。
保険会社のデスクにいっても担当スタッフが不在であり、しばらく待つことに。
ようやく用紙を入手したのですが、医師に診察内容など書いてもらうために再度診察室の前で順番待ち。
そしてサインをもらうために受付に戻ります。もちろんここでも待つ。
サインをもらってようやく院内の薬局に言って薬をもらおうとしたのですが、医師のサインがないと言われ、再度診察室の振り出しに戻ります。。。
どうにか医師のサインをもらって薬をもらってひと段落、最後は受付に戻ってお会計をします。
全ての工程を終えるだけで院内中を歩き、多くの事務作業を行わなくてはならず、軽く1時間を超えます。
これが発熱や体がしんどいときは診察を終え検査をして薬を処方してもらうまでに死んでしまいそうです。
2回目の受診は、小さなクリニックを受診しました。移動範囲が少なく院内のシステムも少しは簡単だろうと思ったからです。医師は丁寧に診察をしてくれ、待つ間も順番はスタッフがコントロールしてくれているので待つのは安心することができました。
しかし、問題は医師がカルテに書いたことを他のスタッフが読まないため、(もしくは医師がちゃんとカルテに記載していないため)処置をする際、受付に戻る際、毎回同じように受診理由をきかれ、処置室では「何しにここに来たの?」とまで聞かれる具合。
郷に行っては郷に従え、日本のように効率的でないのは重々承知ですが、思わず「カルテ自分で読んで」と言ってしまったほどです。
傷口が感染しており消毒してもらうために処置室に入りました。滅菌した器具をつかって消毒したいようでしたが、清潔・不潔操作が破茶滅茶で清潔手袋を丁寧に時間をかけてはめた後すぐに不潔の器具に触っていました。大した感染でないので気にしませんでしたが、これが重症感染だったら怖いな、と感じました。
IT化は感じられ、人もみんな優しいですが、まだまだ医療の質には不安を感じたのでした。
地方の郡病院を視察して感じたこと
2019年4月にルワンダの北部にある郡病院(日本でいう市立病院?)の産婦人科病棟を視察させていただきました。産婦人科の建物はまだ新しくとても綺麗でした。
ここでも電子カルテが進んでおり、院長は患者数や入院患者数などの日々の統計が携帯で確認できるほどシステム化されていました。電子カルテの情報は院内で共有されています。
スタッフは電子カルテ導入に向け2日間の研修を受けたそうです。
分娩病棟でびっくりしたことは各分娩室はカーテンと仕切りで区切られており、声こそは隣に聞こえますが、視覚的にはプライベートがしっかり保たれていました。
院長は7ヶ月前に新しく就任したばかりだそうですが、就任して3ヶ月目でこの仕切りを作ったそうです。「プライバシーは守らなくちゃ!」と当たり前に話す院長に驚きが隠せませんでした。
NICUも見せていただきました。綺麗で機能している保育器が4-5台あり、清潔感がありました。800gの児を救命しケアして退院するまでに至った経験もあるそうです。
医療施設の素晴らしさに感動、感激の嵐でした。
最後に
ルワンダ の病院事情は電子カルテ化や医療器具が揃っており、どんどん医療が進歩しているように感じました。
一方、実際に患者になってみると、効率化や医療技術の質という面ではまだまだ発展途上だと感じます。
まさに医療発展の過渡期を肌で感じたのでした。
病院の保育器や医療機器はルワンダ 政府のお金で買っているそうで、支援団体のシールなどはほとんど見ませんでした。国にはお金があって医療にちゃんと投資している様子もわかりました。
今回、ルワンダの保健に関わる方とお話させていただきましたが、ルワンダは物資支援よりも技術支援が必要なのでと言います。本当にその通りだと思いました。すばらしい設備が整いつつある中でスタッフがその設備を効率よく使えるように、根拠を考える力を培うために教育支援、技術支援が必要なのだと、今回多くのことを学び感じることができました。