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本「あやつられる難民ー政府、国連、NGOのはざまで」ルワンダ難民を知らずに国際協力できない

あやつられる難民

ルワンダでは1994年、100日間で約80〜100万人の人が犠牲になったといわれる虐殺があり、それから25年が経過しました(2019年時点)。

現在は、虐殺の要因となったツチ・フツ・トゥワという民族の隔たりを無くし、ルワンダ人として一丸となって発展を目指しています。

今のルワンダは平和だ、と言います。夜も一人で出歩けますし、1年以上ルワンダに住んでいて危ないと思ったことはありません。

でも、その良い側面だけをみていては本当のルワンダを知ることはできませんし、その裏で取り残されている人々を救うこともできません。

だから、このもう一つの側面を知って欲しい。

知らなければ「無視」するのと一緒だから。

今日はこのもう一つの側面について詳しく解説している本「あやつられる難民ー政府、国連、NGOのはざまで」を紹介します。

この本は国連・政府・NGOと難民の関係について主に書かれていますが、この記事ではルワンダという国で起きた難民問題について焦点をあてて、紹介します。

本「あやつられる難民ー政府、国連、NGOのはざまで」ルワンダ難民を知らずに国際協力できない

概要

難民とは?難民はどんな感情を抱いているか?という基本から、政府、UNHCRと難民との関係、難民キャンプと人道支援の実態、を紹介しています。

その中で、難民を助けるはずの国際機関や政府、NGOが難民の加害者になっている実態や出身国政府に難民が利用され犠牲になっている現状、難民の安全保障の問題をルワンダの実例をもとに論じています。

歴史の教科書には書かれていないルワンダの虐殺の事実をここで知ることができ、UNHCR職員としてルワンダの現場にいた著者:米川正子氏だからこそ知り得た実態について綴った一冊です。

著者の紹介

著者:米川正子氏は国連ボランティアでカンボジア、リベリア、南アフリカ、ソマリア、タンザニアとルワンダで活動。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)職員として、ルワンダ、ケニア、コンゴ民主共和国とジュネーブ本部で難民保護・支援や政策立案に従事されています

難民保護の実務経験を生かしながら、難民、紛争と平和に関する研究・活動中。

2016年に、紛争下の性暴力防止を訴えてきたコンゴ人のムクウェゲ医師(2018年ノーベル平和賞受賞者)のドキュメンタリー映画『女を修理する男』を日本で上映し、医師の訪日も実現させた方です。

この本をオススメする人

難民問題や内戦で何が起きているのか?事実を知りたい人にオススメですが、特にルワンダについて知りたい人、ルワンダで国際支援をしたい、働いてみたいと考えている人は絶対に読むべき1冊です

ルワンダ難民とルワンダ政府のことを知り得なくしてルワンダでの国際協力はできません。

1994年の虐殺時のルワンダ政府、国際機関がとった行動・目論見についての詳しい情報を発信している人は数少なく、日本の書籍ではなかなか見つけることができません。

ルワンダに行ってもここで書かれている事実は絶対に見つけることはできません。だからこそ、行く前に是非読んでからルワンダに行って欲しい、と思います。

この本を手にとったきっかけ

2018年ルワンダに移住する際に、ルワンダで起きたジェノサイドについて詳しく知りたくて買った一冊です。

ただ、買った当時の私は、ルワンダに来て間もない頃で、ルワンダが平和に感じ、本を読んでも難しいな、と思って読むのを中断していました。

しかし、しばらく住んでみて、ルワンダの発展の中に取り残されている女性たちがいることを知り、人々が抑圧されているような雰囲気に違和感と恐怖を感じ、再度この本を手に取りました。

そこで現ルワンダ政府がやってきたこと、やっていることを知り、貧困生活を送っている女性たちと話し、今だに1994年の爪痕が残っていることを理解したのです。

感想

ルワンダで世界銀行で定める1日1.9米ドル以下で生活をしている貧困者は現在でも多くいます。

貧困生活を送っている女性たちの多くは1994年で親兄弟を亡くし、孤児や養子になり、学校に行けずに幼少期から家事手伝いなど仕事をしていました。

そんな彼女たちは現在、週1-2回の日雇いの仕事を探すのが精一杯で、生活のために売春をしたり、違法な仕事で逮捕される危険を冒して働いています。

HIVに感染している女性も多く、食費がないため1日1食の食事が精一杯、空腹でHIV治療薬の副作用に苦しんでいる人もいます。

学費が払えず、子供達は進級できていません。

多くは夫からHIVに感染したといいますが、1994年にレイプされ感染した女性もいました。売春してHIVに感染する女性もいます。

私は、彼女たちが安心して眠れる家、安定した食事がとれ、子供たちが学校に行き貧困という負の連鎖から抜け出せるように、雇用を生み出そうと活動しています。

この本を読んでこんな一節がありました

ルワンダの虐殺後の1995年に、ルワンダ国内に154ものNGO団体がいたが、大手のNGOを除いて、多くが人道支援者というより「即席専門家」だったと言われている。その多くは大学卒業したての若者で、勤務経験も技術もほぼ皆無であるのに、現場の活動への参加に意義があるという考えのもとに、「人道的な」目的で一番乗りに現場に入る。(中略)その地域の政治について理解しようとする意欲も関心もない上に、それになるべく突っ込まないように注意する。そしてたとえ支援のプロジェクトが「失敗」したとしても、その原因を言及せず、自分たちはよいことをしたのだからと身構える

私は、「即席専門家」になっていないか?女性たちとの向き合い方が自分よがりになっていないか、原点に立ち返り自問自答する機会になりました。

また、現政府が行っている難民の殺害や、それらに異議を唱え情報発信しようとしている人を口封じのため殺害しようとしていること、国際機関がルワンダとの国交のために黙っていることを知り、恐怖と怒りを覚えました。

ただ単に国際支援したい、貧困女性たちを救いたいと思っているだけでは、女性たちに有益な支援はできないと気づきました。

そして、今現在のルワンダの貧困問題を考えるうえで、この難民問題は切っても話せない存在だと思います。

もしかしたら、こうした貧困生活をおくっている女性たちの中に、何かからの恐怖に怯えている人もいるかもしれないからです。彼女たちの親戚が難民となっている可能性もあります。

それを踏まえて活動することで初めて彼女たちに寄り添えるのだと感じました。

内容を一部紹介

難民は難民キャンプについたら安心か

難民キャンプは安全なところだと思っていました。しかし、受入国・難民の出身政府・UNHCRなどさまざま国や政府などのエゴによって板挟みになって、難民キャンプにたどり着いても支援の享受が困難な立場にあるということがわかりました。

著者はこう述べています。

国外に脱出したからといって、難民の恐怖が必ずしもなくなるわけではない。難民になっても、彼らのに対する政治的、人種的や宗教的迫害、そして市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利の拒絶が続くために、恐怖は続く。

難民はなぜ恐怖心を持ち続けるのだろうか?

ルワンダで1994年の虐殺が発生するとツチの難民が多く発生し、虐殺が終わると虐殺に加担したとされ多くのフツが難民となって国外に逃げました。

逃げた先にもRPFのスパイが偽装難民として潜入しているため、殺害される恐怖とともに生活を強いられる現状があります。

ルワンダ難民の大多数であるフツのイメージが「虐殺首謀者」と大変悪く、受入国や国際社会から差別されやすい現状もあります。

ルワンダ政府と国際機関の関係によって、強制的に難民を帰還させようと配給が減らされることもあるのです。

逃げた先でもRPFに追われたり、国際帰還やNGOから見放され、また逃げた先の国で内戦が行ってさらに他の国に逃れ難民が難民になる現状もあることがわかりました。

最後に

国際社会はルワンダとの国交が悪くなるとさらなる被害者を生み出す可能性を危惧し、簡単にルワンダを非難できない事実、難民受入国も自国の利益となる活動が必要なのも理解できます。

でも、その中で本当に支援を必要としている人々が利用され、居場所を失い人間としての尊厳がなくなっているのです。簡単な問題ではないですが、事実を知る人が一人でも増え、小さな一歩をみんなが踏み出すことで何か変われるのではないか、と思います。

 

 

ABOUT ME
Chisato823
千里(Chisato) ルワンダ在住、助産師。 ビジネスで女性支援をするためAfricanDaisyを設立 元青年海外協力隊(27-3/ラオス) バツイチ再婚、遠距離恋愛も経験済み。 アフリカ旅情報やルワンダ女性のこと、書評や日常など書いています。